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執筆者の写真特定非営利活動法人 桑の実

当たり前なんて存在しない

障害福祉の現場では、世間一般では当たり前とされるようなこと、常識とされるようなことは通用しないことも多いです。


例えば、新型コロナウイルスの感染拡大の時、即座に人数を最小限にしてテレワーク及び在宅ワークへの切り替えを行ったのですが、同じような対応をしていた施設は私たちの近隣ではほとんどありませんでした。


私たちのような就労支援の事業所は介護、介助は基本的に行わないので、本来福祉の業界のなかでは圧倒的にテレワーク対応なども導入しやすい施設の種別なんです。ですが、現実にはほとんどそれは進みませんでした。


これは決して新型コロナウイルスを軽視していたわけでもいい加減な対応をしていたわけでもなくて、そうせざるを得なかったというのが正直な現状です。


私たちの施設を例に出すと、テレワーク対応にしてzoomなどで在宅でやり取りが出来る方は全体の3分の1程度です。

これを聞くとzoomを教えて、覚えてもらえばいいじゃん、って思いますよね?違うんです。残りの3分の2はスマホもPCも持っていなくて、住まいにネット環境がない、つまり物理的に不可能ということなんです。さらに残りの3分の1の方は住まいに電話もなかったりします。


その場合、実際に顔を合わせるしかやり取りする方法がないんです。さすがに一人ひとりに施設や法人でスマホを支給したりネット環境を整えることはできませんから、出勤の制限は難しいよね、という判断になるわけです。


あるいは、言葉を話すことが出来ない方もいらっしゃいます。やはりその方にオンラインで対応するのは難しいでしょう。


介護、介助を必要としない就労支援の事業所でも、多くの福祉施設の現場でテレワーク対応などが進まないのは、そういった要因も大きく影響しているわけです。


LINE、zoom、Twitter、だれでもどこでも繋がれて話したりコミュニケーションがとれるツールですが、“誰でも”に入れない方たちがいるということは普段あまり意識しないのかもしれません。



いつもいつも、障害をお持ちの方と過ごさせてもらいながら、自分の持っている常識、当たり前、普通、そんなものは存在しないんだと思い知らされます。


常識とは、大人になるまでに集めた偏見のコレクションだ。とはかの有名なアインシュタインの言葉。

常識を逸脱したような“変な子”とみられていた彼だからこそたどり着けた境地があります。


自分の中での規範や常識は持っておくべきなのかもしれませんが、それを他人に押し付けすぎていないか、そこは誰もが注意する必要があるのではないでしょうか。

なによりも、自分の常識も歪んでいる、この認識を持つことがすごく大事なことなんです。これは私たちが障害福祉の現場の中で、誰よりも如実に、具体性を持って学ばせてもらっていることです。


争いのほとんどは常識同士のぶつかり合いです。自分の常識もズレている、その認識をみんなが持てたら、世界はもう少しだけ優しくなれるかもしれませんね。



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