福祉の業界に限らず、人と接する仕事であればだれもが悩み、考えたことのある課題かもしれません。
得意なことを伸ばすのか、それとも苦手なところを克服し、欠点を埋めるのか。もちろんどちらも効果があってどちらも必要なことだと思います。
なので一概にこっちがよくてこっちがダメということではないことを理解しつつ、一つエピソードをお話させていただくと、うちの施設を利用していた方がある会社に就職されて、当然その方の就職後の支援に携わらせて頂くことになりました。
その時の仕事内容は、社内の清掃。そこまで広い会社ではないので、一人で会社を回りながら清掃をこなし、一か所終わるたびに報告にいくような業務内容でした。
その方の得意なことは、覚えた仕事をしっかりこなすこと。知的障害や発達障害をお持ちだったので覚えるまでは時間もかかるし失敗を繰り返しながらになってしまいますが、一度覚えたことはしっかりと出来るようになります。
一方で苦手なことは、“衛生管理”。就職前から2~3日同じ服を着てくるようなこともままあったのですが、実は障害福祉の現場ではそこまで珍しい話ではありません。
さらにご家族と同居されているので家庭での衛生管理というのはどこまで行っても最終的にはご家族のご協力が必要になる状況でした。
会社としては清掃業務をやる人間が2~3日も同じ服を着ているなんて信じられない、という主訴で、これはその通りです。しかし一方でこれまで何十年もやってきた生活習慣を急に変えることが出来ない。次第に会社からご家族への要望の声も大きくなり、互いの意見の齟齬が目立つようになりました。
もちろん衛生管理の懸念等は予め会社にもご家族にも伝えていたのですが、仕事面での成長度合いと比較し、衛生管理も同じように改善していくイメージがついていたのだと思います。想像以上に状況に改善が見られないと会社側のイライラが募り、ご家族としても応えきれない状況になってしまいました。
チームを組んで複数の支援機関での支援を行っていたのですが、支援者の中でも明確な解決策を見出すことが出来ず、この方は結局約半年で退職という形になりました。
今考えてみても非常に力不足で申し訳なかった事例ですが、少なくともここでは全員が得意なことを伸ばすよりも欠点を埋める方向性にしか視点がありませんでした。
実はこの“視点が偏る”ことに問題があって、特に欠点を埋める視点に立つと、欠点ばかりが目に付くようになってしまいます。すると、本来は出来ていて褒められるは図のことでも、当たり前と感じてしまったり、目に入らなかったりしてしまうのです。
とはいえこの方の事例の場合、こうすればうまくいったのに!という明確なものは今でもわかりません。
そのうえで感じることは、得意なことを伸ばすのも必要なことだし、欠点を埋めるのも必要なことだけど、すべての視点をどちらか一方だけにしてしまうのはリスクが高い、ということです。
得意なことを伸ばすことも欠点を埋めることもトレードオフの関係で、必ずそれにより失うことも出てくるわけです。特にチームで動いているときなどはこの“俯瞰的視点”がないとどちらかに行きすぎてしまうか、どっちつかずの中途半端で終わってしまいます。
仕事・家庭・人間関係、様々な問題があると思いますが、自身の視点んい一度目を向けて、得意なことを伸ばす視点なのか、欠点を埋める視点なのかを把握していただけると、これまでにはなかった発見が得られるかもしれませんね。
私たちの失敗談でした。
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