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執筆者の写真特定非営利活動法人 桑の実

忘れる才能

施設の中では、最近利用を始めた方もいれば、古参のベテランの方もいらっしゃいます。

異動などは当然ないので、利用年月が長い方同士は当然関係も濃くなっていきます。


しかし、精神障害・知的障害をお持ちということからも、情動的な部分や時には性格、会話能力に至るまで、時期や体調、服薬の様子などによって同じ人が全く違う人のようになってしまうことも少なくないし、小さないざこざが大きなトラブルになってしまうこともよくあります。


そんな時、思うのは“人には忘れる才能がある”ということ、そして、その能力は間違いなく自分たちを助けてくれる能力だということです。


女性同士の友達三角関係のような状態から、それぞれが個々に大小トラブルを起こしてしまった方たちがいました。当時は何度も同じようなトラブルが散見されるので難しさを感じていたんです。



トラブルの時にはテンションも上がってしまっているので極端な行動に出やすく、連絡先を消したり着信拒否までしたりと結構な騒ぎに毎度なるのですが、いつのまにかまたお互いに連絡をとるようになり、またトラブルになってしまいます。


この事例の場合、実は具体的なきっかけや解決策があったわけではなかったのですが他の方が入ってきたりする中で自然とトラブルは減っていきました。


一般の会社などで大きな人間関係のトラブルはそこまで頻繁に起きるものではないと思います。しかし、恐らく一度起きてしまえば、誰かが会社を辞めたり、部署が変わったり、とにかくもう一度元の状態に戻ることは難しいでしょう。


一方、うちの施設では大きなトラブルが何度あっても、本当に何事もなかったかのようにお互いがまた仲良しになったり、また初めてみたいに同じトラブルを繰り返したちするんです。


しかもお互いに無理してそれを繕っているわけではなく、本当にその時の感情を忘れてしまっているんです。もちろん、出来事としては覚えているのですが、現時点で自分に降りかかっていない感情というものの記憶は、鮮明なものではなくなっているようで、出来事は覚えていてもその時のイライラだったり憎しみだったり、リアルな感情は忘れてしまっているんです。


これって本当にすごいことだなぁと思います。私だったら絶対に一度トラブルになってしまった人とは少なくとも暫くギクシャクしてしまうし、元の状態には戻れないことが大半です。

きっと、忘れるという元から私たちが持っている自分を守る能力をうまく使えているかどうかの差なんだと思います。


大きなトラウマなどは別かもしれませんが、ツラいことや大変だったこと、思い出したくないことは恐らく、脳が早めに忘れるようにもともとできているんでしょう。

逆に言えば、私たちのようにいつまでも恨みや憎しみが消えないのは、一度抱いた感情を何度も何度も繰り返し自分の中で反芻してしまっているからなのでしょうね。


悪いことが起きたとき、哀しいことが起きたとき、許せないことが起きたとき、自分の中でその感情を大きくしてしまわなければ、結構早めに立ち直ることが出来るのかもしれません。


自分を守るための“忘れる能力”。有効に使えていますか?





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