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執筆者の写真特定非営利活動法人 桑の実

支援者の限界

日々、私たちは障害をお持ちと一緒に過ごし彼らや彼女らの将来のために、微力ながら偉そうに、支援者という立場で関わらせてもらっています。


私たちの仕事は福祉の分野ではあるものの、いわゆる介護職ではなく、支援者という立場。なかなか一般的に説明し、イメージしてもらうのが難しい職業です。

私たちは身体介助は行いませんし、障害に対する専門的な深い知識もありません。


ただただ、障害を持つ彼ら、彼女らと一緒に仕事をし、一緒に過ごし、一緒に課題を解決していくのが私たちの役割です。

とはいえ実際には、成果らしい成果が出ることはほとんどなく、むしろトラブル対応やイレギュラー事例への対処で日々の時間が過ぎてしまうことも少なくありません。


もちろん、我々支援者が入ることで生活課題が解決され、いい方向に向かう方もいらっしゃいます。逆に言えば、私たちが入ってもあまりいい方向へ向かってもらうことが出来ず、現状維持のケースやむしろ状態が悪化してしまうようなケースもないわけではありません。


そんな環境の中で日々仕事をさせてもらって、いつも感じることがあります。


それは、“支援者はいつも、おまけだ”ということ。




これまでうまくいっていなかった状況を変えるきっかけになれるかも知れない。働きかけによりこれまでできなかったことが出来るようになったり、引きこもっていた状況から外に出ることが出来るようになるかもしれない。

それは事実ですが、私たちはそのささいなきっかけに過ぎないし、要素のうちの一つでしかないんです。


いずれ何らかの形で好転していたであろう人に関わることでそのタイミングを早めたり、自分にとって良くない方向に使ってしまっていたエネルギーの出しどころを変えてあげることで成長に向かえることはあるかもしれません。


しかし、どんな優秀な支援者でも、本人のやる気を出させることはできないし、エネルギーを無理やり高めることはできません。


どこまで行っても、最後は本人次第なんです。

どれだけ頑張ってもそれが本人の心の底から出ている頑張りでなく、やらされている頑張りだったらやっぱり成果は出ないんですよね。


教育の世界でも会社の部下や新人さんの育成でも同じことが言えるのですが、一つ間違いないことは、最終的には本人次第だということ。

これを認識しておく必要があると思うんです。


教育・支援・援助という立場になると、相手を思うあまりに相手を変えようとしてしまう瞬間があります。

論破したりきつく罵倒したり、時には、もうこの人はダメなんだ、と否定してしまったり。


でも、外から周りの人間が変えようと思って変えられるほど人は単純ではありません。


その人が仮に、なってほしい理想の状態で過ごした時、一番過ごしやすい環境を作るお手伝い、それくらいの距離感で、でも全力で彼ら、彼女らの未来に希望を持つ。

それがきっと支援者という立場の人間なんだと思うんです。


希望は持つけど、期待しない。


そんな立場でひっそりと影から支えてくれる人がいたら、きっと人は成長へと向かいやすいと思うんです。


何もしない、何もできない、力及ばず、それが支援者だし、支援者という立場にはたくさんの限界がある。でも、それでいいんです。


支援者という立場の人間にとって一番大切なことは、自分の及ぼせる影響の限界を知り、最後は本人に委ねることなんです。もちろん本当に何もしないのはダメですが、それ以上に気を付けなければいけないのは、出すぎることです。

主役は本人たち。私たち支援者は、あくまでおまけ。


日々の仕事で忘れてしまいそうにもなるんですが、私たちにとってはすごく大事にしたい考え方です。





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