生活保護受給者についての問題は時折ニュースの見出しになることもあります。
そんな時よく目にする意見が、
「生活保護でパチンコするとはけしからん！」
というもの。
確かに、皆で払っている税金から生活保護費が出て、それを使ってパチンコをする人達を見て怒りや憤りを感じる気持ちはよくわかります。
しかし、障害福祉の現場を見てみると、物事の本質的問題がそこにないことがよくわかります。
実際、当法人の施設を利用している方の中にも生活保護受給者でありながらそのお金でパチンコをしてしまったり散財をしてしまう方が正直言って少なくありません。
そのことを肯定するつもりは毛頭ないのですが、事実として過去にもそういう方はたくさんいらっしゃいましたし、障害福祉の現場では実はよくある出来事の一つなんです。
実は、生活保護という制度の中で、最も優れていて最も考えなければならないのは“医療費”なんです。
生活保護受給者の方は基本的に保険診療はすべて無償で受けることが出来ます。
例えば、風邪を引こうが、転んで骨折をしようが、虫歯を治しに歯医者へ行こうが保険診療の場合は本人の負担がありません。
そのこととパチンコとどんな関係があるのでしょうか。
生活保護になってでもパチンコがやめられないというのは、正直言って依存症といわざるを得ません。つまり精神疾患のひとつです。当法人の利用者で生活保護費でもパチンコがやめられない方もすべて依存症ではない別の精神障害の診断が出ています。
ただでさえ依存傾向が強く、精神障害をお持ちの方が支払いも一切なく医療を受けられるとしたらどうなると思いますか？
そうです。病院へも依存してしまうんです。気づかないうちに少しずつ服薬量が増えてきて、この量では効かないと感じてしまうようになり、どんどん余計に体調を崩していってしまう。
服薬の管理がまともにできず、体調が悪いから2倍飲んでしまったり体調がいいから飲まなかったりしてしまう。
精神疾患の薬は基本的に非常に強いので、医師の処方以外の飲み方はほぼ自傷行為レベルで危険です。しかし病院としても、精神科で出来ることは薬の調整くらいしかないですから、どんどん袋小路に迷い込んでしまうのです。
決して良いことではないですが、生活保護でどうしてもパチンコが我慢できない方にとって、パチンコが唯一の楽しみだったり生きがいったりするんですよね。
もしもそんな状態で、唯一の楽しみであるパチンコを取り上げたらどうなってしまうでしょう。
良くて精神科入院、悪ければ薬への強い依存、自傷や自殺行為など最悪のケースも考えられます。
万が一入院になってしまった場合、依存や病気がさらに重くなってしまった場合、当然医療費もかさみます。その医療費は誰が出すんでしょうか？そうです、生活保護費です。
では、例えば1カ月精神科に入院したらいくらかかると思いますか？3割負担でも数十万円はかかるでしょう。全額が生活保護費から捻出されるということは病院が国に出す請求額は数百万円に上るでしょう。
では、決して適切とは言えませんが生活保護でもらえるお金をパチンコに使ってしまったとしましょう。国の生活保護費負担額は増額しますか？
そう、しないんです。
つまり、気持ちの上では税金を使ってパチンコなんてけしからん！ですが実際に本人の状況や症状を見て、冷静にそろばんを弾いてみると、どう考えても依存がこれ以上強くならないようにパチンコをやってもらった方が経済的なんです。
もちろん、依存もなくなったうえで自立した生活を送れるように支援するのが我々の役目ですが、それには時間も根気もいりますし、すべてのケースがうまくいくわけではないのも事実です。
正直言うと、生活保護費でパチンコなんてけしからん！という部分よりも、生活保護だからと言って医療費が全く無償というのはいかがなものか？というところが気になります。
なぜなら、依存傾向の強い人の病院通いの頻度は本当にすごいものがあるからです。
そこには、体調が悪いという理由だけではなくて、やはり負担が発生しないという要因が大いに関わっているのだと思います。
生活保護受給者の中でも、ある程度制限をかけたり特に依存傾向の強い方には1割でも負担してもらうような制度になれば、少なくとも依存傾向は少し解消されるケースもあるのではないか？と思ったりします。
いずれにしても環境がなければ事態は変わりません。
苦言を呈したようになってしまいましたが、これから生活保護でパチンコというニュースを見たとき、ちょっと思い浮かべてほしいのはそれがなくなった時に発生してしまう症状やお金のこと。必要悪と呼んで良いのかはわかりませんが、少なくとも私たちの経験上、パチンコを取り上げて良い結果になった方はいません。
怒りを感じる前に、これももしかしたら必要なのかもな？そんな風にほんの少しだけ感じてくれたらうれしいです。
Comentarios