私たちの施設の中には、グループホームやアパートでの一人暮らしをしながら生活保護を受給し、施設に通われている方もいらっしゃいます。
もちろん、国が認めた必要な制度ですし、保護がなければ彼ら・彼女らは生活していくことが出来ないので社会として必要な制度であることは間違いありません。
とはいえ一方で、一つどうしても制度がうまく機能していないな、と感じる点があってそれは“医療費”の負担についてです。
健康保険証の提示により、一般的に医療費は3割の負担をすることになっています。高齢の方や保険適応外の治療などの例外はありますが、3割負担でも医療費がそれなりの金額になることは、病院に行ったときに感じると思います。
実は、生活保護の受給者については原則として保険適応医療の負担はありません。いわば病院に無料で行き放題という状態。もちろん、病気や障害のため必要なものであれば問題ありません。
ただ、私たちが関わってきた事例を見ていると一概にそれが良いと言えない点も多いんです。
最も多い問題は、病院への依存が非常に強くなってしまうことです。日本人のほとんどはむしろ逆で、病院に行かなすぎると言われています。よっぽどの緊急事態以外はほとんど病院に行くことがない方がほとんどでしょう。熱が出ても市販の風邪薬でどうにかしてしまったり、少し早めに寝れば治るよ!と言って自然治癒させてしまう人が大多数かと思います。
しかし、制度に守られ自己負担がないとなると、病院へのハードルが一気に低くなってしまうんです。
実際に不調は感じているのかもしれませんが、少し気分が悪いから病院に行きます、少し疲れが取れないから病院に行きます、といった具合に。
残念ながら病院も、何にも異常がないから何もしない、というわけにはなかなかいかないようで、一応弱めの薬の処方などをされることが多いんです。
ここに問題があって、ほとんどの場合その方は精神疾患をお持ちの方で、そもそもホルモン等に影響を与える可能性のある精神科系の服薬をしています。薬の飲み合わせ、身体に合う合わないなどは非常に慎重に見極めなければいけませんし、そういった方はそもそも薬への依存傾向が強いことが多いです。結果的に薬の量がどんどん増え、肉体も精神的にも薬が手放せない、なのに体調が一向に改善しないから次から次へと病院へ行く、という循環になってしまう状況を作ってしまっているのです。
生活保護でパチンコに行っている人に怒る人は多いですが、金額で言えば生活保護費の医療費割合の方が実際何倍も大きいんです。
病院は病気を治したり、疾患をなるべくいい状態に戻したり留めておくために存在しています。生活保護という制度は憲法に定められた健康で文化的な最低限度の生活を営む権利、これに基づき制度構築されています。しかし実情は、生活保護で医療費をすべてまかない守ることで、病院や生活保護の本来的な役割をむしろ阻害してしまっているケースが少なくないわけです。
残念ながら、私たち施設の職員というのはどうしても病院とは違う立場、さらにいえば病院の方が強い立場になってしまう傾向にあります。
私たちがいくら本人に病院への依存、薬への依存を感じていてそれを伝えても、ご本人の状況がかわることはほぼありません。
その改善には最終的には環境が変わるしかないんです。つまり、1割でもいいから自己負担が発生するようにするしかないと思います。
とはいえもちろん、個別具体的事例として負担が発生することで必要な医療が受けられないことが起きてはいけません。ですからそのあたりの塩梅は調整が難しいと思うのですが、特に病院への依存、薬への依存が強い方に対しては数百円でも負担をしてもらことをしなければ、依存が強くなる一方です。
生活保護の問題は本当にそれぞれが異なる難しい事情を抱えていることから、制度ですべてを決めるというのがまずもって不可能であることは間違いありません。社会福祉協議会の職員さんやケースワーカーさんなども本当に真摯に柔軟に個別事案に対応していただいていますが、薬や病院への依存に対してはなかなか解決策を見出せずにいます。
理想論かもしれませんが、各セクションがうまく手を組んで協力出来るように、制度がその手助けになるように少しずつなっていったらいいなぁって思います。
とはいえ私たちにもまだ、出来ることはきっとあるはず。それを見つけ続けて、失敗しながらもまだあがき続けるのがきっと、私たちの役割なんだと思います。今日もない頭を絞ってがんばります!
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