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執筆者の写真特定非営利活動法人 桑の実

言葉をそのまま受け取ってはいけない

人には感情があって、よく言われるのが喜怒哀楽という4つの感情。

日常生活においては相手の感情に寄り添い、素直に受け止めることで人間関係の構築につながるので、感情に寄り添うことは非常に大事なことだと思います。


その一方で、言葉に寄り添ってしまうのは少しリスクがあるんです。なぜなら、人は感情をそのまま言葉にすることが出来ないからです。

心の動きというのは常に揺れ動き、同じ状態ということはありません。喜怒哀楽に表現できるようなわかりやすい単純な感情であれば言葉として表現することも可能かもしれませんが、ほとんどはいわゆる『凪』の状態なわけです。

でも、凪の状態でもいつも同じ感情ではないですよね?少し機嫌がいい時もあれば、少しイライラしているときもあるし、落ち着いているときもそわそわしているときもある。でも、それをいちいちすべて言葉にはしていないし、そもそも言葉だけでは、心のすべてを表現するのは不可能です。

今これを読んでいただいている瞬間の感情を、すべて相手に伝わるように説明してください。無理ですよね?それくらい、心と言葉には元々差があるんです。


さらに、相手への気遣いや羞恥心、プライド、自己開示への抵抗感、人間関係など、様々な影響が重なり、意識的にも無意識にも情報を操作してしまうことも多いのです。


普段の生活であれば、そのズレはそこまで問題ないのですが、悩みや相談といった場面では、この小さなズレが大きな食い違いを生んでしまうことも少なくありません。


例えば、仕事で自分だけ出来ないことがあって落ち込んでいる、という相談を受けたはずなのによくよく聞いてみると、後輩として入ってきた異性のことが気になっていて、その仕事の指導係を同期の少し苦手な人がやっている。本当は自分が指導係になっていいところをみせたかったのに、という嫉妬の感情がそもそもの悩みであったということも少なくありません。




さらにやっかいなことに、このズレを認識していて、恥ずかしさなどからあえて情報をズラしている場合もありますが、ほとんどの場合、このズレを自分でも認識していないのです。

先ほどの例でいうと、本当にその仕事が自分だけ出来ないことが課題だと思って課題解決に取り組んで、もし仮にその仕事が出来るようになったとしましょう。

残念ながら悩みは解消されないんですね。今度は、上司が正当に評価してくれないとか、指導係の人に対して、指導ばかりして自分の仕事をやってないなどと思ってしまうようになります。


このように、悩みや相談事に対する向き合い方としては、相手の問いに正確に答えることよりも、相手の問いに隠れた本当の悩みがないかを疑い、正確な問いを見つけることの方がよっぽど大事なことなんです。


もちろん、本人すら認識していない場合がほとんどですから、そう簡単には見つかりません。空振りもたくさんします。それでも、同じような質問を角度を変えながら繰り返し、言葉やニュアンス、表情などから違和感を探していく作業をすることで、少しずつ見えてくることがあります。


人は、悩みがある状態をよくないと思ってしまいますが、悩みはあってもそれがなんなのか、どうすれば解消できるのか、なぜ今は解消できていないのかということが見えている悩みならそれほど悪い影響にはならないことが多いのです。


それよりも、悩みはあるんだけど何にどう悩んでいるのかわからずモヤモヤしている、という状態や、解決方法がわからない、という状態の方が何十倍もメンタルに与えるマイナス影響は大きいんです。

悩みがわからない、解決策がわからない状態だと、いずれそれ自体が悩みになってしまうんです。

太ってしまって、ダイエットしなきゃ!と思っていてもやり方もわからないし時間もない状態だと、それがさらにストレスになってもっと太ってしまう、そんな状況です。

本当の悩みは、仕事のストレスからくる暴飲暴食かもしれないし、恋人やご主人とうまくいっていなくて、女性として優しく扱ってもらえていないことが原因かもしれません。


ですからもし、あなたが人の悩みを聞く機会があった時、その時には決して良いことを言ってあげようとか、解決してあげようとか思う必要はないと思います。むしろ、本当に悩んでいることは何なんだろうな?というのを一緒に整理してあげる、そんな心構えで相手の話をとにかく聞いてあげる、これが実は一番解決に近かったりします。



ここまで読んでくださった方はなんとなく感じたと思いますが、そうなんです。人と人とのコミュニケーションって本来、こうやって地道な面倒くさい作業なんです。だからこそ、時間を使う相手は選んで良いと思うし、周りのみんなにこんなコミュニケーションをする必要はないと思うんです。ほどほどでいい。

その代わり、相手のことを知りたいな、幸せになってほしいなっていう相手には、こういう面倒くさいコミュニケーションをどこまでもとってあげる、それが愛情って呼ばれるものなんだと思います。


最後に、言葉といえばこの人、武田鉄矢さん率いる海援隊さんの歌の、ある歌詞をご紹介します。

『言葉は 言葉にできないときに 一番伝わる言葉になった 響き続ける言葉になった』


どうか、あなた自身を大切に、言葉では表せないほどあなたにとって大切な人を、大切にしてください。


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