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執筆者の写真特定非営利活動法人 桑の実

障害者雇用は一般の30年遅れている現実

更新日:2020年7月2日


こんにちは。

この記事を読んで下さりありがとうございます。

就労継続支援B型・就労移行支援施設『桑の実クラブ』の岡本です。




本日は私たちの業界、つまり”障害者雇用”についてお話してみたいと思います。


世間では働き方改革に今回の新型コロナウイルスも重なり、どんどん我々の仕事を取り巻く環境は変化しています。

SNSや各種転職サービスでの仕事探しが容易になったり、インターネットを通して誰でも情報発信をして自らが”仕事を作れる”時代になりました。


会社が圧倒的に強い不均等なパワーバランスは崩れ、むしろ社員の方が権利を主張することも当たり前になってきました。

では、僕らの業界ではどうでしょう。


障害者雇用というのは基本的に”法定雇用率”を達成するための雇用であるケースが大半です。法定雇用率とは国に定められた雇用人数のことで、民間企業は2.2%となっています。つまり、労働者45.5人に1人の割引で障害をお持ちの方の雇用をしなければならない(未達の場合には調整金として追加徴税となります。)ということです。


実はここに問題があるのです。

45.5人以上というのは、中小の中でもそれなりに大きな会社です。

ということは障害者雇用の問題というのは、ほとんどの会社は対象にならず、中小の中でもそれなり以上の会社が”システマティック”に行う業務になっているのです。


システマティックのパターン


大きく分けるとこんなパターンがあります。


1、専門の部署や会社(特例子会社など)を作って、多くの人数を雇用する

2、現場で、”影響のないポスト”に置く

3、健常者と変わらず対応する


1つ目は専門の部署や会社を作るパターン、大きな会社やその子会社に多いパターンで、”生産性の向上”が見込めます。しかし、一人ひとりに合った対応というのはなかなか難しく、個性を伸ばしたり業務的な成長を見込めないことがほとんどです。

つまり、清掃であれば10年後も20年後も同じ場所の同じ清掃、同じ役割。

ステップアップという発想がそもそもないわけです。もちろん、そこに誇りを持って勤めている方がほとんどですし、雇用を生み出す事は素晴らしい会社としての役割です。


あくまで特徴としてこんな事があるよ、という意味で捉えていただければと思います。


2つ目も結構あって、例えばこれまではみんなが手が空いていた時にちょこちょことやっていたことなどを一人の仕事として”切り出し”して業務化するといったパターン。これも障害者雇用において非常に有効な手段です。昔でいうお茶くみ係みたいな雑務を一人にまとめちゃうようなイメージ。

ですが、やはりステップアップがなかなか見込めない。逆に言うと体調不良などでその方が休んでも実際会社にはなんの影響も出なかったりするんですよね。

新人の頃などはなかなか会社に貢献できない時期が誰にでもあります。しかし、何年経っても同じ状況からステップアップを見込んでいないと考えると、それは本質的な雇用なのか?


ここも考えていく必要がありそうです。


3つ目はある種フェアなパターン。普通に対応するから、会社が合わなかったら辞めていいよ。という感じですね。これも”わかりやすい”という点ではいいのかもしれませんが、当然普通には就職できないから障害者枠としての応募なわけで、なかなかここの”溝”を埋めるのが難しかったりします。

国では障害者雇用に際し、事業所に”合理的配慮”の提供を求めています。つまり障害をお持ちの方が働きやすいように配慮してくださいね、ということ。しかしこの言葉、お気づきのようにどうとでも取れるんです。意味があってないようなもの、とも言えますよね。


戦力になれない社員を雇用し続ける事よりも雇用という点においては正しいのだと思うんですが、当然離職率は高い傾向になります。


いずれの方法も特定の会社ということではなく、よくあるパターンです。しかし、この障害者雇用の方法はすでにジリ貧になってきているのが現状です。


精神障害・発達障害が増える中で


これまでの障害者雇用というのは主に”身体障害”と”知的障害”に対応するものでした。上記の3パターンはまさにそれで、身体障害をお持ちのかたや知的障害をお持ちのかたであれば、これでもなんとか成り立っていたんです。

身体障害の方には車いす、バリアフリーなど環境の配慮を追加し、知的障害の方に関しては上にあげたような対応という企業が多かったのですが、現在ではすでに、障害をお持ちの方の種類も質も変わってきているわけです。


精神障害や発達障害が非常に増え、当法人でも施設の利用に関する新規の問い合わせはほとんどはそういった障害をお持ちの方です。


そんな中、精神障害や発達障害の方というのは、”一人ひとりに合った対応”が求められるケースがほとんどです。障害の診断名やIQ、EQなどのテストだけでは測れないことだらけなのです。

枠にハマれなかった方たちが抱えている障害なのに枠にはめようとする制度しかなければ、破綻するのは目に見えていますよね?


現状の生産性を上げるシステマティックなやり方では、今後障害者雇用は”構造的に不可能”ということです。


でも、構造は恐らく変わらない


それでも、この構造は恐らく変わることはないでしょう。なぜか?

大きな企業は”生産性”より大切なものはないからです。大企業でも利益を出すことが難しくなった時代、会社に長く貢献してきた人材でさえもリストラしなければいけない時代に”障害者雇用のため”だけに障害をお持ちの方であるという理由で雇用するのはやはりおかしいのです(事実そういった例は少なからずあります。)。


この構造を根本から変えるには法律そのものを根本から見直す必要があるのでしょうが、もっと小さな中小企業も本音を言えば”雇いたくない”と思っています。ですから業界の構造は”問題があるけど、変わらない”のです。


私たちができること


では、そんな中で就職できない障害をお持ちの方が仕事の訓練にやってくる当法人のような施設では一体なにができるのでしょうか?


それは、”施設の仕事を通じて社会と繋がること”です。

障害をお持ちの方は、自分の社会での存在意義や役割を見出せず、自己効力感も低い方が多いのです。

そんな中でも、自分の仕事で誰かに”ありがとう”って言ってもらえた!とか、自分が関わった商品が売っているのを見かけた!とか、小さなことが喜びに繋がります。

そうやって、社会の中で自分が役立っている、役割がある、価値があることを気づける環境を提供することが、僕らができる小さな支援の一歩です。


例えばですが、有難いことに当施設で作っている手作りラスクを販売している楽天市場店では、毎日のように全国からラスクを買ってくれる方がいて、レビュー総数は1000件を超えています。→楽天市場店


全国からたくさんの人が自分たちが作ったラスクを購入してくれて、今後もずっと残るメッセージをネット上に残してくれている有難さをいつも感じながら運営していますし、実際それを見て元気になったという方や、ラスクを食べてもらいたくて施設に通うのが楽しみという方もいらっしゃいます。

そういった話を聞くたびに、我々の役割はここにあるんだろうなぁといつも実感させられます。


障害者雇用という分野が価値観的にも構造的にも非常に遅れてしまっていることは明白な真実です。

それについてはやはり改善していく必要があるかと思いますし、本当に障害者雇用を進めるためには、現行制度には大きな問題があるといわざるを得ないでしょう。


実際の現場においては支援者よりも、給料という形でお金を出す企業側の方が強い立場になるのが実情です。つまり企業の体質を変える施策でなければ障害者雇用の構造は変わらないということです。


しかし、悲観していても文句を言っていても解決しません。私たちが今わかっていることは、”それでも今日も元気に通ってくれている利用者さんがいる”ということ。

今ある環境の中で、私たちにも、まだまだできる事があるはずです。今日からも頑張ります!




#障害者 #障害者雇用 #福祉 #就労継続支援 #就労移行支援


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