今日、ネットのニュースにある見出しを発見しました。
今年の2~6月期における障害をお持ちの方の雇用件数が昨年よりも16.2%増加しているとのこと。
新型コロナウイルスの影響とみられるという考察でした。
このニュースについて様々な捉え方をされる方がいらっしゃるのは当然かと思いますが、それなりに障害者雇用に関わってきた立場からの考察をしていきたいと思います。
まずは、障害者という切り取りをしてこの数字を見れば確かに、非常に大きな影響です。
そのうえで、障害者の方に限らず解雇数という数字を見ていけば、国内では3万件を上回る新型コロナウイルスの影響とみられる解雇が発生してしまっているわけです。
当たり前ですが障害の有無に関わらずすべての業種、すべての方が今回の新型コロナウイルスの影響を多大に受け、苦しい思いをしている方がたくさんいらっしゃるということ。
障害者の方の解雇も増えているけど、当然それ以外も増えているよね、ということは理解しておく必要があるでしょう。
その上で障害者の方というところにフォーカスすると、現在の法律では障害者雇用に対して法定雇用率というものが定められています。
実際の現場、つまり雇用の実情ということでみれば、この数字の達成のために障害者のかたを雇用している企業が少なくないのが現状です。
もう少し生々しい表現をすると、
法定雇用率の達成>>戦力としての雇用
これくらいの不等式になっている例も数多くあります。
もちろん、事例は様々ですから会社の中でその方しかできない活躍をされていらっしゃる方もたくさんいらっしゃいます。
しかし、経験上の中では法定雇用率のための雇用というケースが体感で半数ほど。
法定雇用率というものがあることで、雇用の促進がされることは事実ですが、一方で数字を達成できれば良い、という考え方もできてしまうということです。
仕事は出来なくても構わないから、迷惑をかけずに毎日出社できる方いませんか?そんな相談を受けたことも何度かあります。
これも制度の中でのことですし、責任をもって給与をお支払いいただいているわけですから否定するつもりはありません。
ですがこの雇用体系、いびつであることは明らかですよね?それでも会社がうまくいっているときには問題ないんです。しかし、今回の新型コロナウイルスのように大きく傾いてしまった場合、非常に難しい問題が発生してしまいます。
もし売り上げが下がってしまい、誰かを解雇や契約終了しなければいけないとなってしまったとします。もちろん会社としても苦渋の決断ですし誰も切りたくないのが本音です。ただ、売り上げの回復が見込めない状況においては厳しい判断をしなければいけないこともあるでしょう。
さて、一体だれを?という話になります。色んな見方や考え方があるでしょうが、ここのファーストチョイスで障害者の方が選ばれることはあまりないと思います。
例えば、非正規雇用の方や期間雇用の方が最初になる。上記のような戦力を見込んでいない雇用の場合、もしも売上への関与や仕事のスキルだけでみれば非正規の方や期間雇用の方の方が会社に貢献しているのは間違いないでしょう。
このあたりは非正規労働との兼ね合いにもなってしまうのでなかなか難しいのですが、見方を変えて非常に悪い捉え方をすれば、“障害によって雇用が守られている”ということもできてしまうわけです。
実際、すごく仕事が出来る非正規雇用の方からすれば、なぜ自分が切られて障害者雇用の方は残れるのか?と思うでしょうし、障害があるから正規雇用なんだ、と言われてしまうかもしれません。
もちろん、制度にかなり問題があると思います。そのうえ制度を決めている側の公官庁が未達成及び不正申告をしていたことも数年前に発覚したわけですから、この問題を国が決める制度で解決することはほぼ不可能でしょう。
となるとやはり解決すべき問題は、不適切な雇用にあるわけです。そもそも、戦力になってくれることを期待していないような雇用、成長を期待していいないような雇用をしてしまうから有事の際に、あの人ズルい!あの人だけなんで?という声が起きてしまう。
このニュースの本質は、解雇の問題ではなく“雇用問題”だと思います。
有事の際には様々なトラブルが発生します。ですがそれは、有事だから起きた問題、ではなくて元々あった問題が有事によって顕在化した、ともいえるのではないでしょうか?
我々支援機関も含め、企業も行政も障害をお持ちの方自身も、本当の意味で障害をお持ちの方も活躍できる社会ということをもっと深く考える必要があるのではないでしょうか。
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